ぐるぐる巻き機4.0号 [7.アクシデント]


「バキッ・・・」という、小さな物音の後、胸元から、首元まで来ていたラップが足先へ戻る事無く、そのまま進んで来たのです。

本来なら、最後の1往復なので、首元まで来たら、足先へ戻って包む作業は終わりになるはずなのですが、首元を通り過ぎてそのまま進んで来ているのです。

このまま進んでくると、顔を通り過ぎ、頭の上まで、完全にラップで巻かれてしまいます。

「どうしよう・・・」

「このまま、全身巻かれてみたい・・・」

「でも・・・」

「顔も巻かれてしまうと、呼吸ができなくなってしまう・・・」

「でも・・・」「でも・・・」

今まで、巻かれている所には一切隙間が無く、規則正しく正確に巻かれているので、おそらく口元も完全に隙間無く塞がれてしまう。

こんなに危険な状況に置かれているのに興奮してしまっている、わたし・・・

もう、ラップは首元を過ぎ顎まで来ている、考えている余裕はもう無い。

私は、呼吸を整え、いつもより多く空気を肺に送り込んだ・・・

・・・・・・・・・

・・・・・

・・

ラップは、止まる事なく進んで来る・・・

 

やがて、ラップが、呼吸を止めた口元まで来た時、私は「口を大きく開き、口が開いている状態で巻かれてみたい」と、なぜか、咄嗟に思ったのです。

そして、ラップが、目元まで来た時には、「瞼を閉じずに巻かれたい」と、思っていました。

瞼を閉じてしまうと、今、私がされようとしている、全身拘束状態を見る事ができなくなってしまうと思ったのです。

鏡には、完全に梱包されてしまった私の全身姿、しかも、口を大きく開いたままの私が写し出されています。

ラップの機械が、梱包作業を終えると思っていたのですが、頭の上まで完全にラップで包み終えたラップは、進行方向を逆転させて、今度は足先へ進み始めたのです。

そうなのです、私が勝手に頭の上で終わると勝手に勘違いしていたのです。

足先からスタートして、足先まで戻って1往復(一回)なのです。

まだ、足先へ戻る梱包が残っていたのです。

すでに、息を止めて少し苦しい状態です。

でも、ラップが足先まで戻るまでは、我慢できると思ったのです。

だって、だって、見て見たいじゃないですが物のように扱われ、ラップ梱包され身動きできなくなって、呼吸までできない状態になっている私自身を・・・


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