弥生ちゃん [16.展示]


急に、足をふれられて、「はっ!」と、気づき、目の前を見ると、作業着を来ている二人がわたしを、どこかに運ぶ準備をしている様です。
今が、助けを求めるチャンスかもしれないと思ったわたしは、何とか声を出そうと、動こうと、必死にがんばるのですが、全く身体は動かず、声もでません。
そんな状況のわたしを知らない二人の作業服の人は、わたしを持ち上げ、運び始めました。
もう、わたし、完全に人ではなく、物として扱われています。

幸いな事に、二人の作業服の人は、わたしが下を向いている状態で運び
だしたので、周りを知ることが出来たのです。
まず、わたしが乗せられてきた車の、わたしの下にゴツゴツしていた物が、マネキン人形で、その数が数体あった事。
そして、わたしを運び込んでいる所が、床のタイルを見ると普通の家ではなく、お店の様なタイルだと判った事、そして、最後に、立たされる時に見えたのは、ジュニア向けの洋服を売っているお店だと言う事・・・

「お店だと言うこと・・・・・ってぇぇぇ〜」
「ちょっとまってぇぇ〜」
「このお店って、わたしが今着ている、洋服買ったお店じゃないですかぁぁ〜」
「あぁ、この店員さん知っているしぃぃ〜」
「は、はずかしい・・・よぉぉ〜・・・・」
でも、店員さんわたしには気が付いていないみたい・・・そりゃそうか、本物の人間が、マネキン人形にされているなんて誰も思わないわけだし・・・
その後、わたしは、ショーウインドーに移動させられて、ピンクのかわいいキャップと、ハートの形をした、サングラスを付けられ、展示されてしまったのです。


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